騒音性難聴は「気づかないうちに進み、気づいたときには戻らない」という、静かで残酷な職業性疾病です。4000Hzという数字が最大の武器になります。
騒音って、うるさいだけでしょ? 慣れちゃえば平気じゃん?
ジャスミンさん、その『慣れた』という感覚こそが、いちばん危ないのです。
つむぎさんの言うとおり。騒音性難聴は、内耳にある有毛細胞が壊れることで起こるの。
しかも、この細胞は再生しないわ。
…もどらないんですね。
戻らないの。
だから予防しかない。
そして厄介なのが、初期には自覚できないことよ。
えっ、耳が悪くなってるのに気づかないの? そんなことある?
あるのです。
騒音性難聴は、初期には4000Hz付近の高い音から聴力が落ちます。
これをc5-dipといいます。
そして人の会話の音域は、おおむね500Hzから2000Hzあたり。
4000Hzが落ちても、会話は普通に聞こえてしまうの。
だから本人は気づかない。
…しずかに、けずられていくんですね。
うぅ…それ、めちゃくちゃ卑怯じゃない?
卑怯よね。
だからこそ、健康診断で先に見つけるの。
選別聴力検査では1000Hzと4000Hzの2つの周波数で調べるわ。
4000Hzが入っている理由、もう分かるわね?
初期変化がそこに現れるからですね。
会話音域の1000Hzと、早期発見のための4000Hz。
二段構えというわけです。
よく気づいたわね。
もう一つ、測定の話も。等価騒音レベルは、大きさが刻々変わる騒音を、平均的なばく露量として評価する指標よ。
最大値じゃなくて、平均ってこと?
そう、そこが問われるの。
『最も大きい値を表す』という選択肢は誤り。
平均的なばく露量、と覚えて。
確認クイズ
騒音による健康障害に関する記述として、正しいものはどれか。
- 騒音性難聴は、中耳の伝音機能の障害によって生じる。
- 騒音性難聴は、初期には4000Hz付近の聴力低下から始まり、会話音域の障害が起こりにくいため自覚しにくい。
- 等価騒音レベルは、一定時間内に発生した最も大きい騒音の値を表す。
- 騒音性難聴は、騒音の少ない環境に移れば速やかに回復する。
こたえを見る
正解: 2. 騒音性難聴は、初期には4000Hz付近の聴力低下から始まり、会話音域の障害が起こりにくいため自覚しにくい。
騒音性難聴の初期は4000Hz付近の低下(c5-dip)で、会話音域が保たれるため自覚しにくい。障害されるのは内耳の有毛細胞であり、中耳の伝音機能ではない(選択肢1は誤り)。等価騒音レベルは平均的なばく露量の指標であって最大値ではない(選択肢3は誤り)。有毛細胞は再生せず、回復は困難(選択肢4は誤り)。