酸素欠乏症は、一呼吸で命を落としうる、労働災害の中でも特に致死率の高い災害です。なぜその場所で酸素が失われるのか、原因ごとに整理しましょう。
今日は真剣に聞いてね。酸素欠乏とは、空気中の酸素濃度が18%未満の状態をいうわ。
通常の空気は約21%ね。
21から18って、たった3しか違わないじゃん。
それでそんなに危ないの?
危ないのよ。
しかも酸素濃度が低くなるほど症状は重くなって、極めて低い濃度では一呼吸で意識を失うことがあるの。
ひと息で…? 逃げるひまも、ないんですね。
そして意識を失えば、その場に倒れます。
タンクの中やピットの底であれば、転落や溺水という二次的な災害にもつながります。
さらに恐ろしいのは救助の二次災害。
倒れた仲間を助けようと、保護具なしで飛び込んだ人がまた倒れる。
酸欠災害の死亡者には、この救助者が少なくないの。
うぅ…助けに行くのが間違いなんて、そんなの…。
間違いではないの。
ただ『空気を確保してから行く』が絶対条件。
素手で飛び込まない。
これは知識が人の命を分ける典型例よ。
先生、では酸素はどうして失われるのでしょうか。
原因が分かれば、危険な場所も予測できるという理解で合っていますか。
その通りよ。
大きく3つ。
第一に、金属の酸化。
密閉された鋼製のタンクや船倉では、鉄がさびる過程で酸素が消費されるの。
さびるだけで、空気の酸素がなくなっちゃうんですね…。
第二に、生き物の呼吸。
醸造槽や発酵槽の中の微生物、サイロや果菜の熟成室にある穀物や果物も呼吸して酸素を使うわ。
第三に、他の気体に置き換わる場合。
ドライアイスを使った冷蔵庫や保冷貨物室ね。
そして硫化水素中毒も、酸欠と同じ場所で起こります。
し尿や汚水、パルプ液などが腐敗・分解する過程で硫化水素が発生するためですね。
つまり、汚水槽は酸欠と硫化水素のダブルパンチってこと?
そう。
だから作業前には必ず酸素濃度と硫化水素濃度を測定する。
硫化水素は空気より重いから、底に溜まることも忘れないでね。
確認クイズ
酸素欠乏症等に関する記述として、正しいものはどれか。
- 酸素欠乏とは、空気中の酸素濃度が21%未満である状態をいう。
- 酸素欠乏症は、空気中の酸素濃度が18%未満である空気を吸入することにより生じる。
- 酸素欠乏のおそれのある場所では、防じんマスクを着用すれば安全に作業することができる。
- 硫化水素は空気より軽いため、地下ピットの上部に滞留しやすい。
こたえを見る
正解: 2. 酸素欠乏症は、空気中の酸素濃度が18%未満である空気を吸入することにより生じる。
酸素欠乏とは酸素濃度が18%未満の状態。通常の空気は約21%であり、21%未満をもって酸素欠乏とはしない(選択肢1は誤り)。防じんマスクは空気をろ過するだけで酸素を供給しないため、酸欠のおそれのある場所では使用してはならない(選択肢3は誤り)。硫化水素は空気より重く、底部に滞留する(選択肢4は誤り)。